絵本『それから それから』発売記念イベント
「それから キチム」



『それから それから』
絵:中野真典 / 文:高山なおみ
発売日:2020年7月9日
出版社:リトルモア

ー かそけき糸 かそけき希望の本 ー


長い坂の上にある私の部屋は空に浮かんでいるようなので雨が降ると雨に近くなります。
ある晩夢をみました。洗濯物がはためく昼下がりラジオから流れるちょっとかすれた歌声を私は聞いていました。それから それから というフレーズが重なるにつれ、海に空に地に水に身を沁み込ませていく女の人の歌でした。それは昔の流行歌のようでもあり見知らぬ国の伝承歌のようでもありました。

高山なおみ(帯文より)





わたしたちの絵本ができました。

これを書いている今、ようやく雨がやんで陽が差しはじめ、蝉がないています。
僕の窓から
ナツアカネ、アオスジアゲハ、蝉のこえ、畦の草刈りの音。
私の窓から
青い山、低い雲、海。小鳥の囀りと、水の音。白い仔犬を散歩させてる、お兄さん。

キチムの窓からのぞむ風景、
Titleの窓からのぞむ風景がたのしみです。

これからはじまる、それぞれの "それから それから”。
を、またはじめます。

どうぞのんびり、旅をしにいらしてください。

高山なおみ、中野真典





中野真典さんとの共作『それから それから』は、私が神戸に移住しなければ生まれなかった絵本。今「キチム」のスペースがあるのは、私が昔シェフをしていたレストラン「クウクウ」。30年を経た同じ壁面いっぱいに、絵本の大きな原画すべてを展示できること、とても嬉しく思います。
『それから それから』がオギャアと生まれたある日の日記を、ここに添えさせてください。


●2018年7月5日(木)豪雨
朝から、向こうが見えないくらいの大雨。
ゆうべも音をたて、ひと晩中降っていた。
1階の窓際のあたりで雨漏りしている。
こんなにひどい大雨は、越してきてからはじめてのこと。
電車は走っているようなので、中野さんは今朝早くに帰る予定だったのだけど、避難勧告の知らせがあったので、急きょいてくださることになった。
今日の私は、家にひとりでいるときと同じように仕事をしている。
「暮しの手帖」のレシピと「リンネル」の原稿を校正し、島崎さんと鈴木さんと電話でやりとり。
言葉についての作文も書き上げ、さっきお送りした。
中野さんは2階の部屋で絵を描いてらっしゃる。
「紅茶と甘いもの、いかがですか?」と声をかけに覗いたのだけど、「いりません」とおっしゃる。
向こうを向いて正座し、絵に集中しているみたい。
私も、別の文を書きはじめよう。
窓は真っ白。
相変わらず雨は強い
。 夕方、中野さんが下りてきた。
描いていたのは、新しい絵本の絵だった。
前に小野さんからいただいた絵本用の束見本に、10ページほど描いてある。
きのうだったかおとついだったか、私がみた夢のなかで聞こえてきた歌のことを中野さんに話したのだけど、それが絵本になっていた。
私はすぐに言葉をつけはじめた。
夜ごはんは、ソーセージのパリッと炒め&じゃがいもともやしの炒めもの(中野さん作)、がんもどきと南瓜を煮たの、青じその塩漬け、豆腐とねぎのみそ汁、ご飯、南風荘ビール。
雨はちっとも弱まらず、雨漏りが増えたので、窓際のボウルは五つになった。


●2018年7月6日(金)豪雨
まだ雨は降り続いている。
テレビがないのでラジオをつけている。
これ以上、被害が広がらないよう、天に願うばかり。
いよいよ電車が止まってしまったので、中野さんはもう1泊してくださることになった。
きのうの続きの絵本を描くため、2階に上った。
私は粘土の人形を焼きながら、こうして日記を書いている。
さて、そろそろ私も絵本の続きをやろう。
それが終わったら、「リンネル」の原稿の続きも書こう。
「気ぬけごはん」も書きはじめよう。
ずっと文を書いていたら、頭が詰まってきた。
私は、頭が悪いなあ。
絵本の言葉なら、すーっと水が沁み出るように溢れてくるのだけど。
体を動かしたくなったので、アパートの階段を下り、郵便受けまで行ってみた。
玄関を開けると、霧がたちこめていた。
ミストのよう。
風が吹くと、カーテンのように揺れる。
夕方、中野さんが下りてきた。
絵本の絵は、見開き22ページ分の最後の2枚を残してすべて描けた。
そのうちの2ページは、観音開きの大きな絵になっている。
私も続きの言葉を書いては切り抜いて、絵の下に貼っていった。
夜ごはんは何を食べたのだっけ。
どうしても思い出せない(この日記は、後日書いています)。





●『それから それから』原画展

8月19日(水)-27日(木)12:00-17:00
*22日(土)イベントのためお休み
*25日(火)定休日

○カフェのため、ご入店の際にはご注文をお願いします。





●『それから それから』ライブペインティングと音楽の夕べ
8月20日(木)開場 19:00 / 開演 19:30
料金:予約 2,500円+1ドリンク / 当日 3,000円+1ドリンク
出演:中野真典(絵)× 末森樹(ギター)・山福朱実(歌)
朗読:高山なおみ・中野真典

*終了後、著者ふたりによるサイン会を開きます。

ご予約方法
<メール予約> 件名を「8/20予約」とし、「お名前(ふりがな)、携帯番号、人数、お連れ様のお名前」を添えて、メールにて下記アドレスまでお申し込みください。
yoyaku1@kichimu.la

○メールを送信されると自動返信メールが届きます。受信拒否設定をされている場合、キチムからのメールが届きません。設定の変更するかまたは別のアドレスから再度送信してください。 再送の際には「再送」とご明記ください。
○3日経ってもキチムからのメールが届かない場合、再度ご連絡ください。その際、別のアドレスをお持ちの方はあわせてご明記ください。
○当日の開場時は整理番号順の入場となります。 整理番号は予約完了メールにてお知らせいたします。
○新型コロナウイルスの感染状況などによっては延期または中止する場合がございます。





撮影・寺澤太郎 

高山なおみ
1958年静岡県生まれ。キチムのスペースに以前あったレストラン「kuukuu」のシェフを経て料理家に。におい、味わい、手ざわり、色、音……日々五感を開いて食材との対話を重ね、生み出されるシンプルで力強い料理は、作ること、食べることの楽しさを素直に思い出させてくれる。また、料理と同じく体の実感に裏打ちされた文章への評価も高い。著書に『日々ごはん』シリーズ、『帰ってから、お腹がすいてもいいようにと思ったのだ。』『料理=高山なおみ』、『実用の料理 ごはん』、『ロシア日記』『ウズベキスタン日記』『たべもの九十九』など多数。絵本は『アン ドゥ(絵・渡邊良重)』、画家・中野真典との共作『どもるどだっく』、『たべたあい』、『ほんとだもん』、『くんじくんのぞう』。新刊に『帰ってきた 日々ごはん⑦』、写真絵本『おにぎりをつくる(写真・長野陽一)』、『ふたごのかがみ ピカルとヒカラ(絵・つよしゆうこ)』がある。
http://www.fukuu.com/


撮影・上山知代子 

中野真典
1975年兵庫県生まれ。大阪芸術大学卒業。保育士として勤務。のちに画家、絵本作家として本格的に活動を開始する。主な絵本に、『おもいで』(文・内田麟太郎)、『おはなしトンネル』(以上イースト・プレス)、『もういいかい』(BL出版)、『かかしのしきしゃ』(理論社)、そのほか紙芝居絵本『あなのはなし』(童心社)。高山なおみとの共作に『どもるどだっく』(ブロンズ新社)、『たべたあい』(リトルモア)、『ほんとだもん』(BL出版)、『くんじくんのぞう』(あかね書房)。最新刊『ミツ』(佼成出版)は、愛猫ミツとの別れを描いた。『旅芸人の記録』は自身で立ち上げた出版レーベル「くちぶえ書房」の第1作目絵本であり、画家・絵本作家の道へ導いた若き日の出会いや創作の原点を描いた。
http://www.nakanomasanori.com


撮影・畠山浩史 
末森樹 Suemori Tatsuru
1984年 東京生まれ。ギタリスト。上智大学外国語学部卒。在学時代から演奏活動を始める。ソロ演奏、作曲も行う。ドキュメンタリー映画『犬と猫と人間と』(飯田基晴監督)、『風は生きよという』『道草』(ともに宍戸大裕監督)の音楽担当。ソロアルバムは『風は生きよという』『葡萄』。コンピレーションアルバム『ぼくのゆめは…奈良少年刑務所詩集から』に参加。


山福朱実 Yamafku Akemi
北九州の小さな印刷屋に生まれる。1986年よりイラストレーターとなり、現在は木版画を中心に活動。絵本に『ヤマネコ毛布』(復刊ドットコム)、『砂漠の町とサフラン酒』(架空社)、『ぐるうんぐるん』『菌の絵本 かび・きのこ』(農文協)など。物語の挿絵に『水はみどろの宮』(石牟礼道子 作・福音館書店)などがある。朗読や歌のライブ等をギタリスト・末森樹氏とのデュオで行う。
http://nekoyanagioffice.blog.jp